
ビジネス書や交渉術のセミナーなどで「BATNA」という言葉を見かけたことはありませんか?
「交渉にはBATNAが重要」と言われても、具体的に何をどう準備すればよいのかピンと来ない人も多いかもしれません。
実はBATNAは、ビジネスパーソンにとって交渉を有利に進めるための必須の考え方です。
この記事ではBATNAの意味から重要な理由、具体例まで初心者にわかりやすく解説します!
BATNAとは何か?
BATNAとは「Best Alternative to a Negotiated Agreement」の略で、交渉がまとまらなかった場合の「次善策」や「他の選択肢」を意味します。
簡単に言えば、「この交渉がうまくいかなかったときに自分が取り得る最善の行動」です。
たとえば…
- A社と取引交渉中
→ ダメだった場合、B社と契約するという選択肢がある - 給与交渉中
→ 妥協できない場合は、他社への転職という選択肢がある
この「他の選択肢」がBATNAです。
なぜBATNAが重要なのか?
交渉でBATNAを持っていると、次のような効果があります。
- 強気で交渉できる
→ BATNAが強いほど「この条件で無理に妥協する必要はない」と判断できる
- 冷静に判断できる
→ BATNAがあることで「最悪でもこの選択肢がある」という安心感が生まれる
- 相手のペースに巻き込まれにくい
→ BATNAがないと相手の条件を呑みがちになる
逆にBATNAがない状態だと、「この交渉を絶対にまとめなければ困る」という心理状態に陥り、弱い立場で交渉することになりがちです。
そのため、交渉を行う時はなるべくBATNAを持つように事前に準備しておくことが重要です。
具体例
①転職活動でのBATNA
例えば、A社から内定が出ているが、条件がやや不満。
このときにB社でも最終面接を控えており、内定の可能性が高い状況だとします。
この場合のBATNAは「B社に行く」という選択肢。
このBATNAがあることで、A社との年収交渉でも無理に妥協せずに済みます。
逆にBATNAがない(他に選択肢がない)と、条件が悪くても、A社のオファーを受け入れてしまいがちです。
具体例② 営業活動でのBATNA
営業担当者が大口取引の価格交渉中だとします。
もしこの契約が取れなかった場合でも、別の複数の見込み客がすでに商談中である場合、その状況自体がBATNAになります。
この場合は「この取引だけに依存していない」という安心感があるため、利益を削りすぎるような過剰な値引きに応じなくて済みます。
具体例③ 仕入れ交渉でのBATNA
メーカーがある部品をサプライヤーX社から購入しようとしているケース。
もしX社との価格交渉が難航しても、すでに品質・納期ともに対応可能なY社やZ社の候補があるとすれば、それがBATNAです。
BATNAが強固であれば、X社に対して「それなら他社から調達する」という選択肢を実際に行使でき、より有利な条件を引き出すことが可能になります。
BATNAの作り方・磨き方
では、どうやってBATNAを作れば良いのでしょうか?
- 選択肢をリストアップする
→ この交渉がまとまらなかった場合に考えられる他の手段は何か?
- 選択肢の実現可能性を検証する
→ 実際に実行できるか?費用や時間はかかりすぎないか?
- 選択肢を事前に強化しておく
→ 他社への打診や並行交渉、代替ルートの準備を進めておく
ポイントは「仮の選択肢」ではなく現実的に実行できる選択肢を持つことです。
BATNAが実際に強ければ強いほど、自信を持って交渉に臨むことができます。
現時点でBATNAがなければ、交渉の前にBATNAにつながる選択肢を増やす努力をするのも必要かもしれません。
ビジネスパーソンが知っておくべきBATNAの視点
ビジネスパーソンとして把握しておくべき視点としては下記が挙げられます。
- BATNAは交渉の「保険」ではなく「武器」である
- BATNAの存在は自信につながり、交渉の心理的優位性を生む
- BATNAが弱いときは、無理に交渉をまとめず選択肢を先に増やす努力をすべき
- 相手のBATNAも推測しておくと、どこまで条件交渉できるかの判断材料になる
たとえば、仕入れ交渉の場で相手が「代替供給元がなくて困っている」とわかれば、自社の交渉余地が広がることになります。
まとめ
BATNAとは、「交渉が成立しなかった場合に自分が取り得る最善の選択肢」のこと。
強力なBATNAを持つことで、
- 過度な妥協をせず
- 冷静に交渉を進め
- 相手に流されず主体的に判断できる
という大きなメリットがあります。
ビジネスのあらゆる交渉シーンで「BATNAは何か?」を常に意識して準備を整えておくことが、交渉力を高めるコツになります。
次の商談や交渉の場面でも、ぜひBATNAを意識してみてください!