今回はMECE(ミーシ―)について。
フレームワークの前提となり、ロジカルシンキングの基本概念と言われるMECE。
「実は名前は知っているけど、詳しくは知らない、、、」
という人も多いかもしれません。
様々なフレームワークを使いこなせるようになるためには、まずはこのMECEをよく理解することがめちゃくちゃ大事です!
このMECEについてメリットや活用時の注意点も含めてわかりやすく解説します。
MECE(ミーシ―)とは?
MECEとは「Mutually Exclusive & Collectively Exhaustive」のそれぞれの頭文字を取った言葉です。
- Mutually=互いに
- Exclusive=ダブりなく
- Collectively=全体として
- Exhausitive=モレがない
要するに「モレなく、ダブりなく」という意味。
読み方は「ミーシ―」もしくは「ミッシー」と読みます。
MECEは全体像を捉え、必要な要素を漏れなく網羅し、ダブりを無くして情報を整理するフレームワークの前提となる考え方です。
問題を解決しようとする時や事業や製品の戦略を考える時には
- 「抜け漏れがないか?」
- 「ダブりがないか?」
をチェックし、全体像を把握することが必要です。
なぜなら、問題は様々な要素が複雑に絡み合っていて、思い付くままに分析や検証をしても漏れがあったり、重複があったりして、全体像を把握しないとうまくいかないことが多いからです。
MECEで問題に関する要素に抜け漏れやダブりがない状態にした上で、それぞれの要素を分解して検証していけば問題の本質を理解できる可能性が高くなります。
このMECEはもともと世界的なコンサルティング会社のマッキンゼーで使われていた論理的な考え方で、あらゆるフレームワークがこのMECEで構成されています。
そのため、ビジネスでフレームワークを使いこなすには、このMECEの考え方を理解し、MECEで物事を考える習慣をつける必要があります。
MECEの具体例
MECEのイメージが湧きやすいように具体例で考えていきます。
まずはMECEになっていない例で何が問題なのかを把握しましょう。
あるカフェの店長が
「うちの店は男性の来店が多く、女性が少ない。若者も少ないからなんとか手を打たないと!」
と考えていたとします。
この場合、
- 男性と若者がダブり(若者の中にも男性が含まれているため)
- 女性と若者がダブり(若者の中にも女性が含まれているため)
となりダブりがあるので、MECEで整理できていません。
この例の場合、漏れはないので、カフェの店長が
- 男性の若者(35歳以下)
- 男性の中年以上(35歳以上)
- 女性の若者(35歳以下)
- 女性の中年以上(35歳以上)
と分けて、それぞれの打ち手を考えればMECEな状態で問題解決に取り掛かれるようになります。
その他にも、恋人へのプレゼントをどうするかを検討している時に
- お金の掛かるプレゼント
- お金の掛からないプレゼント
と分けて考えることもMECEです。
MECEにならないと何が問題か?
「MECEにならないと何が問題なの?」
と疑問に思う人も多いと思うので、MECEを意識せずに問題解決や商品の企画立案を行う場合の問題点を確認しましょう。
問題解決の場合の問題点
何か問題に直面して、その解決を図ろうとしている場合。
MECEを意識せずに問題解決に取り組むと、現状把握の際に重要な事実を見落としてしまう可能性が高まります。
問題解決のために最も重要な事実把握が正確に出来ず、全体像を把握しないまま問題を解決しようとすることになります。
そのため、問題の本質的な原因にたどりつけず、表面的な原因に対する解決策を実施することしかできない。
このような結果に陥る可能性が高くなります。
MECEを強く意識して、問題を起こしている現状を「モレなく、ダブりなく」把握することは問題の本質的な原因に気付き、根本的な問題解決につながる確率を高めてくれます。
企画立案の場合の問題点
MECEを意識せずに商品開発等の企画立案を行う場合。
「新商品のターゲットをどうするか?」
を検討している時に、例えば
「働く女性層と子育て層をターゲットにしよう!」
と思い付きで決めてしまうと、どうなるでしょうか?
まず、
- 働きながら子育てをしている女性
- 専業主婦をしながら子育てをしている女性
がいるため、働く女性層と子育て層の中にダブっている女性がいます。
また、お子さんがいない専業主婦の女性はターゲットから抜け落ちています。
それに子育て層にはお子さんがいる男性も該当するため、ターゲットが明確に絞り込めていません。
しかも、働きながら子育てをしている女性と専業主婦をしながら子育てをしている女性ではニーズが全然違う場合もあるはずです。
このようにMECEを意識せずに新商品の企画立案を行う場合はニーズの異なるターゲットを一色単にしてしまったり、本来ニーズがあるターゲット層を見落としてしまったりするなどの問題が発生します。
また、競合との差別化ばかりを意識して、競合より高機能な商品を開発したけど、
「もっとシンプルな機能で使いやすい方が良い。」
という顧客の視点が抜け落ちていたために
「良い商品になったと思ったのに全く売れなかった。」
という失敗は様々な会社で起きています。
この場合はマーケティングの基本となる3C分析のフレームワークを使えば防げるはずですが、MECEを意識した商品開発をしていないために起こる失敗なのです。
MECEを活用するメリット
では、次にMECEを活用することのメリットを簡単に確認しましょう!
問題解決に強くなる
仕事の中で発生する問題は複雑で簡単には本質的な原因にたどりつけない場合が多いです。
しかし、MECEを活用して、その複雑な問題を「モレなく、ダブりなく」分解して整理していけば、複雑に見える問題も全体像を把握してシンプルにすることが出来ます。
全体像がしっかりと把握出来れば、真の原因にたどり着ける可能性が高くなります。
そのため、MECEを意識することは問題解決能力を高めるベースとなってくれます。
仕事は問題解決の連続なので、MECEの考え方を使いこなせるようになれば、ビジネスレベルを一段階引き上げることが出来るはずです。
大きなプロジェクトのタスク洗い出しに効果的
MECEを意識することはタスク漏れを防止することにも大きな効果を発揮してくれます。
特に新店オープンなどの大きなプロジェクトを任された時のタスク把握に非常に効果的。
私自身も新店オープンのプロジェクトリーダーを担当した時にプロジェクトのタスク洗い出しをMECEを強く意識して行いました。
プロジェクトに取り掛かる前に、プロジェクトで実施すべきタスクをMECEを強く意識して事前に洗い出し、整理する。
その上で、WBS(Work Breakdown Structure)というプロジェクトのタスクを細分化した一覧表を作成します。
そうすることでプロジェクトの全体像を把握し、
「今自分はプロジェクトのどの位置にいるか?」
を把握し続けることが出来ます。
大きなプロジェクトの場合
「やばい、これが抜けていた、、、」
というタスク漏れが発生するとプロジェクトの進行をストップさせてしまったり、プロジェクト自体の失敗につながったりする可能性があります。
MECEを強く意識したプロジェクトのタスク洗い出しを行うことはタスク漏れによるミス発生を防止し、プロジェクトの全体像を把握することに非常に効果的です。
論理的で説得力のある提案やプレゼンのベースを作ってくれる
先程の新商品開発の企画立案の場合で提案書を作成し、役員に見せたとすると
- 「他のターゲット層は検討したのか?」
- 「ターゲット層がダブっている。」
と指摘されて却下される可能性が高いです。
MECEを意識せずに検討した新商品企画やプレゼンは、対象の「モレやダブリ」が多く、その点を指摘されると説得力に欠けてしまいます。
MECEを活用して全体像を「モレなく、ダブりなく」把握することは説得力の高い企画提案やプレゼンにつながり、成功の確率を高めてくれます。
MECEを活用する時の手順
MECEを活用する時の手順は
- 目的を明確にする
- MECEで問題全体の構成要素を細分化する
- 優先順位をつける
というイメージです。
①目的を明確にする
MECEで全体を細分化し、整理するのは何かしらの目的を達成するためのはずです。
そのため、まずはその目的を明確にしておくことが大切。
目的を強く意識したうえで、それを達成するための解決の糸口を見つけるためにMECEを使って全体を細分化するのです。
②MECEで問題全体を細分化する
目的が明確にできたら、MECEで全体を細分化します。
MECEで物事を考えていくにはトップダウンアプローチ(演繹的アプローチ)とボトムアップアプローチ(帰納的アプローチ)の2種類の方法があります。
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは大きな分類から順に細分化していく方法でMECEの基本的なやり方です。
例えば、カフェの利益向上が目的の場合は
利益=売上ーコスト
で表すことが出来るので、下図のように上から分解できます。
このように大分類からどんどん階層を掘り下げて細分化していきます。
下の階層になっても出来るかぎりMECEになるように意識することが大切です。
細分化の目安は数階層程度で考えておけば良いのですが、何でも何段階も細分化しようとするのは意味がありません。
重要な部分は深く掘り下げて、さほど重要でない場合はそこまで掘り下げないようにして細分化にメリハリをつけることが大事です。
ボトムアップアプローチ
トップダウンアプローチがMECEの基本にはなりますが、
- 「大分類がよくわからない。」
- 「どんな分類の仕方をすればいいんだ?」
という時はなかなかうまくいきません。
その場合はボトムアップアプローチが有効です。
ボトムアップアプローチでは目的に合った要素を思いつくままにブレインストーミングのように洗い出していきます。
例えば、顧客アンケートから得た様々な声をグルーピングして、顧客のニーズを整理する場合などで活用します。
上図のように顧客アンケートの結果を洗い出して、それぞれをグループにまとめます。
「そのグループはどんな分類か?」
を考えれば、階層が上の項目に整理できるという流れです。
ボトムアップアプローチは全体像がわかっていない時や分類の仕方が曖昧な時に有効ですが、要素の洗い出しに漏れがあったり、大分類にダブりが出る可能性があるなどデメリットもあります。
上図のように顧客アンケートからニーズを整理する時も十分な量のアンケートがあれば、そこからニーズを「モレなく」ピックアップできるかもしれません。
しかし、アンケート数が少なかったり、偏ったりしている場合は見逃すニーズが出てくる可能性があります。
そのため、1つのアプローチにこだわるのではなく、2つのアプローチを上手に併用する場合があることを頭に入れておきましょう。
私の場合はトップダウンアプローチをベースにボトムアップアプローチも併用しながら行うことが多いです。
特に初めて担当する新規店舗オープンなどの大きなプロジェクトでタスク洗い出しをする場合はトップダウンアプローチだけだと大分類自体に漏れが出る可能性があるので、必要な細かいタスクをブレストして洗い出し
「この大分類はなんだろう?」
と「具体的なタスク⇒タスクの大分類」というように「具体⇒抽象」を活用して、出来るかぎりタスクの漏れを無くそうとしていました。
③優先順位をつける
MECEで問題の全体像を細分化し、「モレなく、ダブりなく」要素を洗い出したら優先順位をつけましょう。
細分化した要素の全てを細かく分析していたら、時間がいくらあっても足りません。
最初のステップで明確にした目的を達成するために、
「どの要素を詳細に分析すればいいか?」
を考えて、優先順位をつけて取り組んでいくことが非常に大切です。
MECEを使うのは問題の本質的な原因に気付き、改善していくことです。
「少ない資源でいかに成果を最大化するか?」
という意識で優先順位をつけて、分析し、問題解決の打ち手を探っていきましょう。
MECEを活用する際の注意点
最後にMECEを活用する際の注意点です。
MECEを意識することはメリットが非常に大きいのですが、下記には注意しましょう。
- 厳密なMECEにこだわり過ぎない
- 目的とMECEの切り口を合わせる
- 細分化の階層基準を合わせる
①厳密なMECEにこだわり過ぎない
MECEを意識して、問題全体を把握しようとすることは非常に大切です。
しかし、厳密なMECEにしようとして
- 「これは少しダブっている。」
- 「まだ漏れがあるんじゃないか?」
と延々とMECEによる細分化に時間を掛けるのは本来の目的からずれてしまいます。
MECEで物事の全体像を捉えて、目的を達成することが最も大事なのであり、厳密なMECEを完成させることが目的ではないからです。
MECEで「モレなく、ダブりなく」を意識する時は特に「モレがないか?」の方を重要視して行いましょう。
なぜなら、多少ダブりがあってもそこまで問題になりませんが、重要事項がモレると目的を達成できない可能性が出てくるからです。
②目的に沿ったMECEの切り口にする
MECEは目的を達成するために活用します。
そのため、目的に沿ったMECEの切り口(細分化の仕方)にする必要があります。
例えば、先ほどのカフェの利益向上を目的としてMECEを活用する場合。
最初の分類を
- ハード面(室内・外観・器具など)
- ソフト面(接客・価格・食事の質など)
で分けてしまうと、どうやって利益向上につなげればいいかがわかりにくくなってしまいます。
目的が「お店の改善」であれば、お店のハード面とソフト面で改善方法を検討すればいいのでこの切り口で良いかもしれません。
しかし、「利益向上」が目的の場合はもっと直接的に利益向上に関係するMECEの切り口にする必要があります。
利益=売上ーコスト
なので、この場合は
- 売上
- コスト
にまず分けるのが良い切り口でしょう。
③階層基準を合わせる
MECEで問題全体を細分化する時の階層には注意が必要です。
当たり前のように出来ている人も多いと思いますが、抽象のレベルがあっていない状態で細分化するとMECEではなくなってしまいます。
例えば、先ほどのカフェの利益向上を目的としてMECEで細分化する場合。
大分類を
- 顧客単価アップ
- コスト削減
と分けた場合は階層の基準が崩れています。
顧客単価アップは「売上向上」のための手段の1つです。
本来であれば、コスト削減と同じ抽象レベルは売上向上です。
もし顧客単価アップに階層を合わせるなら、「変動費削減」などのコスト削減の手段にしないと漏れやダブリが発生してしまいます。
このようにMECEで問題の全体像を細分化する時は、
「階層の基準が合っているか?」
ということにも気を使うようにしましょう。
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