今回は売上債権回転期間について!
会社の資金繰りに大きな影響を与えるのが売上債権です。
商品を売って、すぐ現金が入ってくるなら会社の資金繰りは楽になりますが、実際にはそうはいきません。
「利益が上がっていても現金が全然増えない、、、」
という場合が大いにあり得ます。
なぜなら、商品を売っても売上債権が回収できなければ、実際に現金を回収することが出来ないからです。
会社が売上債権をスムーズに回収出来ているかをチェックする指標が売上債権回転期間です。
この売上債権回転期間について
- 「売上債権回転率とは何が違うの?」
- 「売上債権回転期間は短い方が良い?」
- 「目安ってどれくらい?」
こんな疑問を1つずつ解消しながら、わかりやすく解説していきます!
売上債権回転期間とは!?
売上債権回転期間とは、商品を販売することによって発生する売上債権がどれくらいの期間で回収できるかを表す指標のこと。
売上債権回転期間の期間は、月数か日数で表されます。
例えば、売上債権回転期間=1.5ヶ月だったら、商品を売ってから売上債権を回収して現金が入ってくるまでに1.5ヶ月掛かる、という意味です。
日数で表される場合は、売上債権回転期間=60日であれば、商品を売ってから60日間で売上債権を回収出来るということになります。
この売上債権回転期間は短ければ短い程、売上債権の現金化が早いことを意味しています。
売上債権回転期間を知ることにより、
「その会社の資金繰りはどうなのか?」
ということを把握するのに役立ちます。
そもそも売上債権とは?
そもそも売上債権とは、会社が商品(サービス)を販売することによって得た対価で、一定期間後に支払われることを約束した金銭債権のことをいいます。
具体的には
- 売掛金
- 受取手形
が売上債権に該当します。
売上債権っていうのは、簡単に言えば、「売ったけどまだお金をもらっていない状態」です。
売上債権回転期間というのは、
「この売上債権をどれくらいの期間で回収出来ているか?」
をチェックする指標なのです。
売上債権回転期間の計算方法は?
売上債権回転期間の計算方法は簡単です。
計算に使うのは、
です。
売上債権回転期間を月数で表した場合
まずは売上債権回転期間を月数で出した場合の計算式
売上債権回転期間(月)=売上債権残高÷(年間売上高÷12)
計算式の意味としては、「売上債権の残高」を「売上高1ヶ月分の合計額」で割っています。
要は、「1ヶ月間の売上高に対し、売上債権の合計額はどれくらいか?」ということです。
例えば、年間の売上高が6,000万円、売上債権の残高が600万円の場合
- 年間売上高:6,000万円
- 月間売上高:6,000万円÷12=500万円
- 売上債権の残高:600万円
売上債権回転期間(月)=600万円÷(6,000万円÷12ヶ月)=600万円÷500万円=1.2ヶ月
となります。
売上債権回転期間を日数で表した場合
次に売上債権回転期間を日数で表した場合の計算式は
売上債権回転期間(日)=売上債権残高÷(売上高÷365)
となります。
月数とは違って、日数で回転期間を出す場合は売上高を365日で割ります。
つまり、1日分の平均売上高を出すわけです。
そして、「売上債権の残高」を「1日分の平均売上高」で割ります。
これで「売上債権の残高」が「1日の売上高の何日分あるか」が計算できます。
例えば、年間の売上高が7,300万円、売上債権の残高が400万円の場合
- 年間売上高:7,300万円
- 月間売上高:7,300万円÷365=20万円
- 売上債権の残高:400万円
売上債権回転期間(日)=400万円(売上債権残高)÷(7,300万円÷365日)=400万円÷20万円=20日
となります。
売上債権回転率との違いは?
売上債権回転期間と混同しやすい指標に売上債権回転率というものがあります。
この売上債権回転率は、会社の売上債権回収の効率性を示す比率。
会社を運営する上で発生する売上債権がどの程度滞留しているかをチェックするための指標です。
売上債権回転期間と売上債権回転率は実質的には同じものです。
売上債権の回収に掛かる時間を
- 日数で表すのが売上債権回転期間
- 回転数で表すのが売上債権回転率
です。
表し方を変えただけで、本質的な違いはありません。
売上債権回転率の計算方法は?
売上債権回転率の計算式は、売上債権回転期間よりもシンプルです。
売上債権回転率=売上高÷売上債権残高
で計算できます。
先ほどの例でいえば、年間の売上高が6,000万円、売上債権の残高が600万円の場合
- 年間売上高:6,000万円
- 売上債権の残高:600万円
売上債権回転率(回転)=6,000万円(年間売上高)÷600万円(売上債権残高)=10回転
となります。
この回転数が多ければ多いほど、売上債権の回収がスムーズに効率的に行われているということです。
売上債権回転率を売上債権回転期間に直すには?
「売上債権回転率の回転数だとイメージがつかみにくい、、、」
という場合は売上債権回転期間に変形すれば、直感的に把握しやすくなります。
売上債権回転率を売上債権回転期間に変形する計算式は
売上債権回転期間=期間(月or日)÷売上債権回転率
で表すことが出来ます。
先ほどの例でいえば、年間の売上高が6,000万円、売上債権の残高が600万円の場合
- 年間売上高:6,000万円
- 売上債権の残高:600万円
- 売上債権回転率:10回転
売上債権回転期間(月)=12(月数)÷10(売上債権回転率)=1.2ヶ月
となります。
最初の例と一致しましたよね!?
表したい期間を売上債権回転率で割れば、売上債権回転期間を計算することが出来るのです。
売上債権回転期間の目安は?
意味や計算方法がわかったら、次は
「売上債権回転期間の目安はどれくらい?」
という疑問が湧いてくるはずです。
結論から言うと、売上債権回転期間は業界によって大きく異なるので全業種の平均を知る意味はほとんどありません。
目安を知るなら、業界ごとの平均値を把握しておいた方がよっぽど有益です。
小売業・飲食業など消費者相手の商売は売上債権回転期間が短い傾向
コンビニなどの小売業や飲食業などはすぐに現金が入ってくる消費者相手の商売です。
- 商品をレジで現金払いしてもらう⇒すぐに現金が入ってくる
- 飲み屋で食事を提供した後、お会計をしてもらう⇒すぐに現金が入ってくる
このようにすぐに現金が入ってきやすい業種は売掛金自体が少ないです。
そのため、売上債権回転期間は短い傾向にあります。
- 小売業の売上債権回転期間の平均:30日前後
- 飲食業の売上債権回転期間の平均:10日~20日
※中小企業実態調査より計算
製造業や卸売業などの企業相手の商売は売上債権回転期間が長い傾向
一方で、主に企業相手の商売を行う製造業や卸売業などは一般的に売上債権回転期間が長い傾向にあります。
理由としては企業との取引はその場で現金払いではなく、手形や請求書払いが普通だからです。
売上が上がったらほぼ間違いなく売上債権が発生する。
そのため、売上債権は小売業などの消費者相手の商売に比べて増加し、売上債権回転期間が長くなるのです。
- 製造業の売上債権回転期間の平均:70日前後
- 卸売業の売上債権回転期間の平均:50日前後
※中小企業実態調査より計算
となるので、小売業や飲食業より回転期間が長くなっています。
有名企業の売上債権回転期間はどれくらい?
では有名企業の売上債権回転期間はどれくらいなのでしょうか?
名前を良く知っている有名企業の売上債権回転期間を計算してみました。
- ディズニーランドを運営する「オリエンタルランド」:約15日
- セブンイレブンを運営する「セブン&アイ ホールディングス」:約22日
- ZOZOTOWNを運営する「ZOZO」:約84日
- 焼き鳥店の鳥貴族を運営する「鳥貴族」:約3.5日
- 回転寿司チェーンくら寿司を運営する「くら寿司」:約5日
- 建設業界売上高No.1の「大和ハウスグループ」:約34.5日
※2018年度の各企業の決算短信より計算
上記で挙げた例では主に消費者相手の商売が多いので、ほとんど売上債権回転期間が30日以内ですね!
ZOZOだけが80日以上と突出して多いのですが、それにはZOZOTOWNで実施している「ツケ払い」サービスが大きく影響していると考えられます。
消費者としては
「ツケ払い=買ったけど、お金は後で払えばいい」
ということですが、ZOZOからすれば、
「売ったけど、お金はまだもらっていない状態=売掛金発生」
になります。
そのため、ツケ払いの人数が増えれば増えるほど、売掛金が増えるので売上債権回転期間が突出して長いのだと考えられます。
あくまで私の仮説ではありますが(笑)
売上債権回転期間は短い方が良い?
売上債権回転期間は商品やサービスを売ってから、実際に現金を回収出来るまでの期間です。
そのため、売上債権回転期間は短いほうがいいです。
ただ
「短い方が良いのはわかるけど、売上債権回転期間が長いと何が問題なの?」
という疑問も出てくると思います。
売上債権回転期間が長いと何が問題なのか?
売上債権回転期間が長いと下記のような問題が発生してくる可能性があります。
- 運転資金増加→資金繰りが悪化しやすい
- 利益が出ているのに、キャッシュフローが赤字
- 売上債権を回収できない可能性が高まる
1.運転資金増加→資金繰りが悪化しやすい
事業を行うために必要なお金のことを運転資金といいます。
売上債権回転期間が長い=売上債権を回収して現金を得るまでに時間が掛かるということ。
例えば、商品を50万円で仕入れて取引業者に100万円で売ったとします。
その代金が2ヶ月後に入金されるとすると、2ヶ月間は商品を売って得た代金が入ってきません。
でも、商品の仕入れ代は先に払う必要があります。
そのため、2ヶ月間の間に商品を売れば売るほど、仕入れ代の支払いが多くなり、事業を行うために必要な資金が増えていきます。
もちろん資金に余裕があれば、全然問題ありません。
ただ一部の中小企業のように資金繰りに苦しんでいる会社にとって、売上債権の回収に掛かる時間が長いと運転資金ばかりがどんどん増えて倒産のリスクを高めてしまいます。
2.利益が出ているのに、キャッシュフローが赤字
損益計算書の売上高は商品を売った時点で売上高に反映されます。
なので、ちょうど決算直前に大量に商品が売れた場合、商品の代金はまだ入ってきていないけど売上高は大幅に増えることがよくあります。
その場合、会社の本業の利益である営業利益は黒字なのに、実際の現金の動きを表す営業キャッシュフローは赤字という場合が出てきます。
なぜなら、今期の売上高は増えても、決算直前に売れた商品の代金が入ってくるのは次の期だからです。
売上債権回転期間が長ければ長い程、この利益とキャッシュフローのずれは大きくなりがちです。
3.売上債権を回収できない可能性が高まる
売上債権は時間が経てば必ず回収できるというものではありません。
売上債権の回収に2ヶ月間掛かる場合、その間に取引業者が倒産してしまったらその売上債権は回収できなくなります。
コンビニは商品を売った代金をその場でもらえるので、回収出来ないということはほぼあり得ないですよね?
でも企業相手の取引では、取引先企業がお金を払えなくなり、売上債権を回収出来ないリスクが少なからずあるのです。
今は何が起こってもわからない時代。
売上債権回転期間が長くなればなるほど、売上債権が回収できない=貸し倒れのリスクが高まってしまいます。
このように売上債権回転期間が長すぎると問題が出てきます。
同業他社と比べて売上債権回転期間が長いのであれば、回収期間を短くする工夫をする必要があるのです。
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