会社の収益性の分析で便利なのが売上高利益率。
これは、
「売上高に対して利益がどれだけの割合で出ているか?」
をチェックして、会社が儲かっているかを分析する数値です。
これには利益ごとに売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率など種類があります。
今回は会社の収益の大元である売上高総利益率について
「売上高総利益率って何?」
「高い方がいいの?」
「各業界の平均はどれくらい?」
「改善するにはどうすればいい?」
これらの疑問を1個ずつ潰していきます!
売上高総利益率とは!?
売上高総利益率とは、会社の売上高に対して、売上総利益(粗利)がどれくらいの割合を占めているかを表す数値です。
つまり
「売上に対してどれだけ利益を出せているか?」
を示す指標です。
会社の収益性を判断するのに使われる指標の1つ。
売上総利益率や粗利率とも呼ばれますが、同じ意味です。
そもそも売上総利益とは?
売上総利益は
「一定期間に自社商品やサービスがどれだけの利益をもたらしているか?」
を表している会社の基本的な利益のことです。
粗利と同じ意味なので、売上総利益=粗利です。
この売上総利益は企業の儲けの大元。
ここから人件費や法人税等が引かれて、会社の最終的な利益(当期純利益)になります。
そのため、ある程度はこの売上総利益が大きくないとまずいのです。
この売上総利益の計算方法は
売上総利益=売上高ー売上原価
となります。
要は会社の売上(本業での売上)から売上原価(商品の仕入れなどの費用)を引いた金額が売上総利益ということです。
この売上総利益を使って計算される売上高総利益率は、会社が販売している商品(サービス)の強さを表しています。
商品を仕入れて売る場合は、その仕入れた商品にどれだけの利益を乗せて売れているか?
製品を製造して売る場合は、製造原価にどれだけの利益(マージン)を加えて売れているか?
これがわかります。
商品の仕入れ額に対して利益を大きく乗せても商品が売れるならば、
「その会社の商品は強い」
ということです。
例えば、100円で仕入れた商品を130円で売れるのであれば、30円の利益を上乗せして販売出来ていることになります。
計算方法は?
この売上高総利益率の計算方法はとても簡単です。
たとえば、
売上総利益=1億円
売上高=10億円
ならば
売上高総利益率(%)=売上総利益÷売上高
=1億円÷10億円
=10%
ということです。
売上原価率と売上高総利益率は表裏の関係
売上総利益=売上高ー売上原価
でしたね?
なので、売上高総利益率の式は
売上高総利益率=(売上高ー売上原価)÷売上高
と分解することが出来ます。
要は
「売上原価を引いた売上高は、売上高の何%か?」
というのを表しているとも言えますね。
なので、低いほど良いとされている売上原価率と売上高総利益率は表裏の関係にあります。
- 売上原価率が高い→売上高総利益率は低くなる。
- 売上原価率が低い→売上高原価率は高くなる。
という感じです。
売上高総利益率は高い方がいい??
売上高総利益率は商品(サービス)の強さを表しているので、基本的には高い方が良いです。
利益率が高い方が同じ商品数を売っても多くの利益を得ることが出来るので、当然ともいえます。
ただ、薄利多売の販売戦略の会社と高級品(付加価値志向)販売戦略の会社だと、売上高総利益率は全然変わってきます。
- 薄利多売→利益率は少ない商品だけど大量に売る。
- 高級品志向→利益率は高いけど、商品の販売数はそこまで多くない。
なので、売上高総利益率が高ければ高い企業が素晴らしい、とまでは言えないということです。
もちろん、薄利多売の戦略のままで、過去に比べて、売上高総利益率が数%上がるならば素晴らしい。
それを高級品志向の販売戦略を取っている会社と比べて、
「売上高総利益率が低いじゃないか!」
と分析するのはナンセンスということです。
業界平均はどれくらい?
売上高総利益率の平均はどれくらいでしょうか?
多くの業界の売上高総利益率は20~30%程度ですが、業種や販売戦略によって大きく変わってきます。
例えば、小売業が平均27.5%前後、卸売業が平均11%前後、製造業が平均22%前後、飲食業が平均55%前後です。
特に、製薬業界や化粧品業界などは売上高総利益率が60%を超える企業が多いなど、非常に高い傾向があります。
ただ、その分販売促進や広告に大きな費用が掛かるので、本業の利益の割合である営業利益率は他の業界と似たような水準に落ち着きます。
一般的に売上高総利益率が高い業界は販売促進費や広告宣伝費などの販管費に多くのお金が掛かります。
一方で、売上高総利益率が低めの業界は売上原価が大きく掛かりますが、販売促進・広告宣伝などは低めです。
このように業界や販売スタイルごとに売上高総利益率は大きく違うことを念頭に置く必要があります。
ただ、同じ業種で似たような販売戦略(薄利多売など)を取っている会社は、売上総利益率も近い数値になってきます。
有名企業の売上高総利益率はどれくらい?
業界平均を知ってもイメージがしずらいという人は、有名企業の売上高総利益率を知りましょう!
- ディズニーランドを運営する「株式会社オリエンタルランド」:37.9%
- セブンイレブンを運営する「セブン&アイ ホールディングス」:19.9%
- ローソンを運営する「株式会社ローソン:」31.3%
- ZOZOTOWNを運営する「株式会社ZOZO」:88.6%
- 建築や賃貸住宅で有名な「大和ハウス工業」:20.3%
- 焼き鳥屋チェーン鳥貴族で有名な「株式会社鳥貴族」:70.1%
このように有名企業の売上高総利益率もかなり差があることがわかると思います。
突出して高いのはアパレル業界の株式会社ZOZOと飲食業界の株式会社鳥貴族ですが、その分、販管費に多くのお金が掛かっています。
そのため、2社の本業の利益率である売上高営業利益率は
- 株式会社ZOZO:21.6%
- 株式会社鳥貴族:3.3%
と売上総利益率から大きく下がっています。
ZOZOはそれでも営業利益率が20%を超えているので相当利益率が良いですね!
このように売上高総利益率だけを見れば、
「ZOZOや鳥貴族がすごく儲かっているんじゃないか?」
と勘違いしてしまうかもしれませんが、その差は業界のビジネスモデルの違いに過ぎません。
そのため、売上高総利益率の自社の数値を分析するには、
- 同業他社で同様の販売スタイルを取っている会社と比べる
- 自社の過去数年との比較で比べる
このような比較の中で課題を見つけていくことが大切です。
売上高総利益率を改善するためには?
売上高総利益率を改善するためには、
- 販売価格を引き上げる
- 売上原価を下げる
→材料費を安く仕入れたり、仕入れ値の割引交渉、商品の生産コストを削減するなど - 取り扱い商品の再構成
→通常会社は利益率の低い商品と高い商品を組み合わせて売っているので、その構成をより利益率が高くなるように再構成する - 取引先の見直し
→大口取引先に大きな割引をして商品を販売しているのが原因で利益率を下げていないか確認するなど - 在庫管理の質を向上
→在庫余剰になり、セールで売り切るということが利益率を下げる
などが挙げられます。
過去数年に比べて売上高総利益率が下がっている場合は、どこが原因になっているかを慎重に見極めましょう。
- 商品が飽きられていないか?
- 利益率の高い商品の魅力を十分にPR出来ているか?
- 競合との値下げ合戦に陥っていないか?
- 在庫余剰でセールばかりしていないか?
などなど1つ1つチェックをして、ボトルネックがどこかを見極めていく。
根本の原因がわかれば改善する可能性は高くなるはずです。
ただ売上高総利益率はあくまで会社の最終的な利益ではない点に注意が必要です。
売上高総利益率を上げたのに、それ以上に人件費や広告費がかかってしまっては、売上高営業利益率が下がってしまったら逆効果です。
売上高総利益率だけでなく、営業利益率や経常利益率など、それ以外の利益率との連動も含めて総合的に判断していきましょう。
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