
データ分析やマーケティングの現場で「k-means法(k-meansクラスタリング)」という言葉を聞いたことはありませんか?
この手法は大量のデータをグループ分け(クラスタリング)するための代表的なアルゴリズムとして広く使われています。
この記事では「k-means法とは何か_」「どんな場面で使えるのか?」「ビジネスパーソンが知っておくべき観点」を具体例を交えてわかりやすく解説します。
目次
k-means法とは?
k-means法とはデータを「k個」のグループ(クラスタ)に分けるための機械学習アルゴリズムです。
クラスタリング(Clustering)という「似たもの同士を集める」分析手法の一種にあたります。
k-meansの「k」は最初に分けたいグループ数を自分で決めるという意味です。
たとえば「3種類の顧客セグメントに分けたい」場合は k=3 と設定します。
ポイントは「グループ分けの基準はあらかじめ決めずに、データの傾向に基づいて自然に分けてくれる」という点です。
k-means法の流れ
k-means法の流れは下記のとおりです。
- データの中にk個の「中心点(セントロイド)」を仮に置く
- 各データがどの中心点に一番近いかを計算して仮のグループ分けを行う
- 各グループの中心点を再計算して更新する
- 2〜3を繰り返して、グループ分けが安定するまで進める
この時の「グループ分けが安定する」とはクラスタの中心点の位置が前回とほとんど変わらなくなることを意味します。
つまり、 データの所属するクラスタ(グループ)が変わらなくなるまで繰り返すということです。
よくある質問:グループ分けが安定するまでってどれくらいの回数?
ただ、「安定するまで繰り返す」と言われても、実際に何回くらい繰り返す必要があるのか気になる方も多いはずです。
目安は以下の通りです。
- 単純なデータ → 数回〜10回程度で収束
- 複雑なデータ → 20〜50回程度
- 大規模データセット → 10〜100回程度が一般的
Pythonなどの多くの実装ライブラリ(例:scikit-learnなど)では最大反復回数(max_iter)を100〜300程度にデフォルト設定しています。
ほとんどのケースでその前にグループ分けが安定します。
具体例① 顧客セグメント分析
マーケティングの現場ではk-means法が非常に多用されています。
例えば、顧客データ(年齢、年収、購入回数など)を分析する場合
- 年齢と年収の2軸でプロットしたデータを k=3 でk-means法でクラスタリング
- 結果として次のような3つの顧客グループが得られる
- 若年層・低所得層
- 中年層・中所得層
- シニア層・高所得層
③ それぞれのグループに最適な広告施策や商品提案を設計する
→ データドリブンなターゲティングマーケティングが実現可能。
具体例② 商品分類
大量の商品データから似た商品を自動的に分類したい場合にもk-means法が有効です。
例えば、ECサイトの商品を価格・レビュー件数・平均評価などの指標でクラスタリングすることで
- 「高価格・高評価」のプレミアムゾーン
- 「中価格・レビュー多数」の売れ筋ゾーン
- 「低価格・新商品ゾーン」
といった商品カテゴリが自然に見えてくる → これに基づいてレコメンドや特集を組める。
具体例③ 営業エリアの最適化
営業拠点の配置やエリア担当を最適化したいときも活用できます。
- 顧客の位置情報(住所・座標データ)をk-meansクラスタリング
- k=5で5エリアに分ける
- エリアごとの営業担当配置やエリア別の重点戦略を設計する
→ 地理的に効率の良い営業活動ができるようになる。
ビジネスパーソンが知っておくべき活用視点
ビジネスパーソンが知っておくべき k-means法の活用視点としては下記が挙げられます。
データドリブン施策の基盤になる
k-means法を活用すれば、データから実際の意思決定に活かせる「グループ分け」を簡単に得ることができます。
マーケティング、商品企画、営業戦略、サービス改善など幅広い分野で活用できるのが特徴です。
これにより「なんとなくの勘や経験でのセグメント分け」から「データに基づくセグメント設計」に切り替えることができます。
事前の仮説が不要
k-means法は教師なし学習(unsupervised learning)に分類されます。
つまり、あらかじめ「このグループに属する」といった正解データを与える必要がありません。
これにより、「意外なグループ構造」や「見えていなかったパターン」が発見できるというメリットがあります。
グループ数kの選び方が重要
k-means法の実務活用ではk(グループ数)の設定が成功のカギになります。
- ビジネス側で意味のあるkを事前に仮定する
- エルボー法などを用いて「最適なk」をデータから探す
- 複数パターンのkを試して現場で意味が通る分類になっているか確認する
ビジネス活用においては「数学的な最適解」だけでなく「使って意味のある解釈ができる分類」を作る意識が重要です。
k-means法の限界と注意点
k-means法は便利な手法ですが、下記のような限界や使用する際の注意点があるので頭に入れておきましょう。
- 初期の中心点の選び方によって結果が変わる
→ 複数回試行して安定解を得る必要がある
- 楕円状のデータや異なる密度のデータには弱い
→ 他のクラスタリング手法(DBSCANなど)との使い分けが必要
- kの設定が任意
→ ビジネス理解と併用が重要
まとめ
k-means法は大量のデータから似たもの同士をグループ化する便利な手法です。
AIやデータ活用が加速する現在、k-means法の基本概念を理解していると「このデータはk-meansで分けたら面白い視点が得られそう」という発想が生まれやすくなります!
ぜひ身近なビジネス課題にも取り入れて、よりデータドリブンな意思決定に役立てていきましょう。