
ニュースや経済の授業でよく耳にする「GDP」や「GNI」という言葉。
なんとなく「経済の大きさ」を表していることは分かっていても、両者の違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、GDP(国内総生産)とGNI(国民総所得)の違いを、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
GDPとは?「国内で生み出された付加価値」
GDP(Gross Domestic Product)とは、「一定期間に国内で生み出された付加価値の総額」のことです。
つまり、日本国内でモノやサービスを生産したすべての経済活動を集計した数値です。
重要なのは「どこの国の企業かは関係なく、どこで生産されたか?が基準」になる点です。
例えば、下記のようにGDPに加算されるかが決まります。
- アメリカのアップル社が日本国内の店舗でiPhoneを販売 → 日本のGDPに加算
- 日本のトヨタが国内の工場で車を製造 → 日本のGDPに加算
- トヨタがアメリカの工場で車を製造 → GDPには入らない(アメリカのGDPに計上)
このように、GDPは国境で区切られた「国内」で生まれた価値を示す指標です。
GNIとは?「国民が稼いだ付加価値」
一方、GNI(Gross National Income、国民総所得)は、「一定期間に国民が稼いだ付加価値の総額」のことです。
以前はGNP(国民総生産)という言葉が使われていました。
しかし、1993年に国連が勧告した「国民経済計算体系(93SNA)」の導入により、国際的な標準用語として GNI が採用されました。
GNIは GDP+海外からの所得の純受取(海外からの受取所得−海外への支払所得) で計算されます。
つまり、「誰が稼いだか?」が基準になります。
- 日本企業が海外でモノを作って利益を上げた → GNIに加算
- 外国企業が日本で稼いだ利益 → GNIからは除外
具体例で確認しましょう。
- 日本のソニーがアメリカで製品を販売して得た利益 → 日本のGNIに加算
- アメリカのマクドナルドが日本国内で得た利益 → 日本のGNIには加算されない
GNPからGNIへの変更背景としては、生産活動よりも「所得の帰属」に焦点を当て、より正確に国民の経済的な豊かさを測ることを目的としています。
【参考】
内閣府:SNA Q&A「GNPとGNIの違い」
内閣府:GNIの定義(PDF)
GDPとGNIの違いを一言で言うと?
GDP:場所ベース(どこで稼いだか)
→国内での経済活動の成果(外国人の活動も含む)
GNI:人ベース(誰が稼いだか)
→自国民による経済活動の成果(海外での活動も含む)
日本の傾向
日本は海外に多くの企業を展開しているため、GNIはGDPよりも大きくなる傾向があります。
例えば、トヨタ・ソニー・日立などが海外で得た収益はGNIに含まれますが、GDPには入りません。
一方で、アメリカなどは外国企業の投資が多いため、GDPのほうがGNIより大きくなる場合があります。
2024年時点の主要国のGDPとGNI
以下は2024年時点での主要国の概算値です(IMF、世界銀行などのデータをもとに算出)。
国名 | GDP(兆ドル) | GNI(兆ドル) |
---|---|---|
アメリカ | 30.5 | 26.9 |
中国 | 19.2 | 18.9 |
日本 | 4.2 | 4.9 |
ドイツ | 4.7 | 4.6 |
インド | 4.2 | 3.6 |
イギリス | 3.8 | 3.3 |
フランス | 3.2 | 3.1 |
カナダ | 2.2 | 2.2 |
ロシア | 2.0 | 2.1 |
※為替レートや国際収支によりGNIは変動するため、概算値として参考程度に。
アメリカはGDPの方がGNIより大きいのに対し、日本はGNIの方がGDPより高いことがわかりますね。
GDP・GNIはどこで確認できる?
GDP・GNIは以下の公的機関や国際機関のウェブサイトで、最新データが確認できます。
- IMF(国際通貨基金)
https://www.imf.org/en/Data - 世界銀行(World Bank)
https://data.worldbank.org/ - OECD(経済協力開発機構)
https://data.oecd.org/ - 日本のデータ(内閣府)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
GDPとGNIの比較表
比較項目 | GDP | GNI |
---|---|---|
基準 | 場所(国内) | 人(国籍) |
海外企業の国内活動 | 含まれる | 含まれない |
自国企業の海外活動 | 含まれない | 含まれる |
主な用途 | 景気分析、政策判断 | 国際所得分析、経済力評価 |
まとめ
GDPとGNIの違いは「国内で生まれた価値」か「国民が生み出した価値」かという基準の違いです。
現代の経済では国内経済を把握するにはGDP、グローバルな稼ぐ力を測るにはGNIがそれぞれ重要です。
GNP → GNIへの変更は、「所得の流れ」をより正確に捉える意図によるもの。
この違いを押さえておくことで、ニュースの内容が一気にクリアになり、経済に強いビジネスパーソンへ一歩近づけるはずです。
【参考】
・内閣府:SNA Q&A「GNPとGNIの違い」
・内閣府:GNIの定義(PDF)
・IMF World Economic Outlook Database
・World Bank Data - GNI